家族介護 19 (静かな朝)

ながた岬

2007年06月05日 03:20

<つづき>

何の前ぶれもなくその日は訪れた。

私はデイサービス立ち上げの為に、12月いっぱいでケアマネ事業所を
退職することになっていた。
引継ぎ等で連日遅くなり、土日も書類の整理に追われ病院へ行けない。

「先生から退院の話は出てないから、まだしばらくかかると思う。
お見舞いに行ってあげてね」と義妹にメールする。誰か顔を出さないと寂しいよね。

週末に義妹から電話があった。
「しばらく行ってなかったから、子ども連れてみんなで行って来た」
「『ティッシュとゴム手袋を持ってきて下さい』ってメモが貼ってあったよ」という。
「わかった、じゃあ明日私が持っていくからいいよ」
明日は日曜日、クリスマスイヴだ。久しぶりに顔を見にいこう。

翌明け方、夫の携帯電話が鳴った。乾いた空気に冷たい音が響く。
電話に出た夫の声と私に投げた視線が、悪い知らせであることを伝える。
遠くに新聞配達のオートバイの音。いつもと変わらない静かな朝だった。

薄暗い廊下を病室へ急ぐ。

義父は眠っている。かたわらで医師が私たちの到着を待っていた。
そして再び目覚めることのない最期の眠りについたことを告げた。

ああ、何てこと!デイは間に合わなかった!
おとうさん、どうして待っててくれなかったの?

利用者第一号はもういなくなってしまった・・・

                             <つづく>

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